12年前、新垣結衣さんの握手会に参加したバナシ
「マジで感動した」
12年前、僕は新垣結衣さんに一目惚れをした。忘れもしない、『smart』というファッション雑誌のニット女子特集のコーナーに載った彼女に心奪われた。
好きが高じて僕は当時流行っていたmixiに『新垣結衣さんと付き合っているていの日記』を書いていた。小学校2年生から男子校に通っていた人間の成れの果てとも言える奇行だ。ちなみにどんなものかと言うと
今日は新垣結衣と初デート。天気予報では降水確率20%。外はちょっと曇っている程度で、誰も傘を持ち歩いてはいない。しかし心配性な僕は念のため使い古したビニール傘を一つ握りしめ、家を飛び出した。
「今日雨ふらないよー?」
「いや、念のため…」
2時間後
ポツポツ…ザーーー
「キャッ、雨!」
雨だ。ホントに降った。おもむろに傘を開いた。二人に雨が当たらないように。小さなビニール傘だったので、二人の距離は近づいた。
「あいあい傘だね。」
「うん…」
ガッキーとこんなに近づけるなんて。願わくばこのまま止まないでほしい。できれば、このままで…
狂気である。しかし、この日記を読んでくれているマイミクシィもみんな熟成された生粋の男子校生なので
「マジで感動した。この二人には絶対幸せになってほしい。次回も楽しみにしています」
と、『狂気に拍車をかけるコメント』を残していた。
『ちゅら☆ちゅら』
そんな中、新垣結衣さんがファースト写真集『ちゅら☆ちゅら』の発売記念イベントとしてサイン&握手会を行うという情報を入手した。これは絶対に行かなければならない激アツイベントだ。僕のmixi日記の読者でガッキーの大ファンでもあった先輩のカズキくんを誘って、一緒に応募した。抽選の倍率がどのくらいだったのかわからないが、執念で見事当選した。それからというもの、ちゃんと学業もおろそかになるほどウキウキが止まらない日々を過ごした。
絶望の電話
発売記念イベントの2日前、カズキくんから電話がかかってきた。
「ごめん、いけなくなった…」
絶望に満ちた声色で告げられた。あんなに楽しみにしていた予定をキャンセルするなんてよっぽどの事態だ。心配になって理由を聞いてみると
「スキー検定4級を受けに行かなくちゃいけなくなった…」
ふざけるな。なんだよスキー検定って。1級ならまだしも4級をこのタイミングで受けに行くなよ。後輩からの心ないバッシングを浴びながらカズキくんは
「ごめん…握手はあきらめるから、誰かを誘って俺の分のサイン入り写真集は持って帰ってきてほしい…」
と、『辞世の句のトーン』で言ってきた。しょうがない、こうなったら先輩のために必ずガッキーのサイン入り写真集を渡すことを決意した。
「誰だか知らないけど、暇だしいいよー」
カズキくんの代わりを探すため、僕のmixi日記の読者を中心に誘ってみたものの、2日前ということでなかなか見つからない。こうなったらあまり興味ない人でもいいかと思い、仲の良かった台湾人のサムくんを誘ってみたところ
「誰だか知らないけど、暇だしいいよー」
軽い。軽すぎる。このプレミアムチケットがこんなやつの手に渡ってしまうのか。同時刻にカズキくんは泣きながらゲレンデを滑り降りるというのに。
イベント当日
そうして迎えた当日、イベント会場の本屋に向かうととんでもない行列ができあがっていた。聞くところによると長嶋茂雄さんのサインイベント以来の集客だったそうだ。
整理券を受け取り、行列に並ぶこと1時間弱。ついに新垣結衣さんの姿が目に入った。
「な、なんだこの透明感は…!?」
ただでさえ女性との関わりのない男子高校生だった僕は緊張でガクガク震えだした。すると隣のサムくんが
「え、あの人が新垣結衣?めっちゃかわいいじゃん!」
と、会場で唯一『初見のリアクション』をしていた。
握手の順番
徐々に順番が近づいていき、いよいよ新垣結衣さんの目の前にたどり着いた。手を差し出すと、両手で握手してくれた。
「事前にシミュレーションで握手したサムくんの手と全然違う…!」
格闘技を嗜んでいたサムくんのゴツい手とは比べものにならないほどの柔らかさだった。そもそも握手のシミュレーションなんかするな。
そして緊張がピークに達した僕は「がんばってください!」と言いたかったところを
「がんばります!」
と高らかに宣言してしまった。さすがのガッキーも苦笑いしながら「がんばってください」と言うしかなかった。mixiではあんなにスムーズに会話できてたのに。こうしてガッキーとの握手は終了した。
ちなみに僕の後のサムくんはなんの緊張もなく握手を終え、去り際にグーサインをして、ガッキーからグーサイン返しをもらっていた。このイベントを余すことなく楽しむな。
発売記念イベント
あれから12年。来月10月25日にトンツカタンの初DVD発売記念イベントが阿佐ヶ谷ロフトで行われる。あのときと同じようにサイン&握手会をする予定だ。ぜひたくさんの人に来場していただきたい。意気込みもあのときと全く同じ、
「がんばります!」