手ぶらバイオバナシ
「ギリギリchop!!」
先日、三四郎の相田さん、ゾフィー上田さんとご飯に行かせていただいた。僕が到着したころにはもうすでに何時間か飲んでいたそう。
「森本、今日なにしてたの?」
「今日は昼間にどこどこへ行って、そしたら…」
「あ、ちょっと待って!」
僕の話を中断し、相田さんと上田さんが目線を上げてなにかに集中し出した。
「B'zでギリギリchop!!」
「わーやられたー!!」
店内BGMでイントロクイズをしていた。2人は飲み始めてからずっとこのゲームをやっていたらしく、新たな曲が始まるたび会話を中断しているとのこと。なんで『イントロ最優先』なんだよ。
「今のは1ポイントだなー」
「ありがとうございます!」
どうやらポイント制らしい。一応気になったので
「今どっちが勝ってるんですか?」
「いや、これ楽しむためにやってるから勝ち負けとかないよ」
なんのためのポイントだったんだよ。付与すんな。
「…で、森本は今日なにやってたの?」
しゃべる気失せるわ。数分後にまたこれ始まると思ったら集中できるわけないだろ。
ソメイヨシノ
それから「せっかくだからかっこよく撮ってくれ」と言われ、
『弱(よわ)クローズ』と
『遠距離攻撃仕掛けてくるタイプの敵』
を店員さんにニヤニヤされながら撮り、店を後にした。その直前に店内BGMが変わったので僕が
「あ!ENDLICHERI☆ENDLICHERIでソメイヨシノ!」
と的中させると
「ダメだよ。一回『ちょっと待って!』って言ってみんなを集中させてからじゃないと」
「そうだよ。勝手に始めないでもらえる?」
ルール厳しすぎるだろ。楽しむやつじゃなかったのかよ。
8年ぶり
店を出た僕らは、そのまま相田さんのお家へおじゃますることになった。主な目的はみんなでバイオハザード7をやるという『モテない男子高校生の過ごし方』である。家に着くと相田さんが
「手洗うなら洗ってこいや」
と『オラオラお母さん』みたいなこと言い出したので洗面所に向かい、僕が手洗いとうがいをしていると上田さんが
「え…うがい…するの…?」
なぜかドン引きされた。聞くところによると上田さんはうがいをするという習慣がないらしく、どうやら約8年間うがいをしてきてないらしい。8年前になにがあったんだよ。風邪予防のためにも絶対にした方がいいと勧めると恐る恐る口に水を含み
『8年ぶりのうがい』させました。意外と大人のうがいをこのアングルで見ることないので貴重だ。
バイオハザード7
そうしていよいよバイオハザード7をやることに。どうやらすでに後半までクリアしているらしく、相田さんのプレイを見守ることに。上田さんはバイオハザード1しかやったことないらしく、ゾンビよりも『とてつもない画質の進化』にビビりまくっていた。
その後上田さんがプレイすることになったのだが、なぜか銃を持たず、敵と遭遇したらとにかく逃げるだけという『手ぶらバイオ』で攻略しようとしていた。
あまりの見応えのなさにもう相田さんは集中力を完全に切らしている。そしてお疲れだったようでいつしかベッドに戻り寝てしまった。そこから僕と上田さんで交互にコントローラーを操作しながらゲームを進めていった。
「あ、ここに銃あったぞ!これで手ぶら卒業だ!」
「なんだこの強い敵は!でもこの爆弾を使えば倒せる!」
「なるほど、この扉はこのアイテムを使えばあけられるのか!」
そしてプレイすること約3時間。
全クリした。なぜゾンビに襲われているのか、ここがどこなのか、主人公が誰なのか、なにひとつわからない状態だったが僕たちはとてつもない達成感に包まれていた。そしてふと我に返った上田さんが僕にこう聞いてきた。
「先輩が途中まで進めたゲーム全クリしちゃってよかったのかな…?」
「あ、たしかに…」
急な罪悪感に苛まれた僕たちは荷物をまとめ、逃げるようにして家を出た。
逃げるのはお手のものだ。
手ぶらバイオやってるから。