トンツカタン森本バナシ

プロダクション人力舎所属、トンツカタン森本のブログ

とある学園祭のじゃんけん大会バナシ

学園祭シーズン

学園祭シーズン到来である。僕らトンツカタンは事務所の先輩、東京03さんについていく形でありがたいことにいろんな学園祭のお笑いステージに出させてもらっている。どの学校もあたたかく迎え入れてくれていつも感謝でいっぱいだ。今回は去年、とある学園祭に行かせていただいたときの話。

その大学は女性の比率が多く、お客さんもほとんどが女性のなか、熱心な視線を送っていた東京03さんの大ファンである伊藤くん(仮名)という男子学生にその日スポットが当たった。人なつっこいキャラクターで東京03さんにイジられ、会場全体がとてもいい雰囲気になっていた。

じゃんけん大会

基本的に学園祭ではエンディングで出演者のサイン入り色紙をかけたじゃんけん大会が開かれる。色紙が欲しい人は立ち上がり、舞台上の僕らとじゃんけんをして勝った人以外は座る。これを繰り返し、最後に残った5人に5枚の色紙をプレゼントするというものだ。

あいこも負けというルールのため、1回のじゃんけんでどんどん人が座っていく。その日も数回のじゃんけんで残り10人あまりとなったのだが、そこで飯塚さんがあることに気付く。

「伊藤くん勝ち残ってるじゃん!」

伊藤くんが強運と執念で勝ち続けていたのである。公平な立場でいなければいけないが、ちょっとだけ伊藤くんに勝って欲しいなという気持ちになった。

強運の伊藤くん

そして次のじゃんけんで勝ち残ったのが6人。その中に伊藤くんもいた。もう決着が近いということで、その6人内でじゃんけんすることになった。色紙は5枚しかないので1人が脱落してしまう計算だ。

「じゃんけん、ぽん!」

5人グーを出すなか、伊藤くんだけがチョキを出した。6人のじゃんけんに一撃で負けるなんてある意味強運だなと思った。伊藤くんの敗退が決まってしまったものの、その日たくさん笑いをとっていたヒーローにできればサインをあげたい。会場全体も「伊藤くんにぜひともサインを」という空気になっていた。

救世主登場

どうにか色紙を増やせないものかとスタッフさんに聞くと、余分な色紙はないとのこと。

「ないならしょうがないかぁ…」

と全員があきらめかけたその時、前列に座っていた5歳くらいの男の子がトコトコとこっちに向かってきた。よく見ると彼の手には色紙が。

「え、これ伊藤くんにあげていいってこと?」

と確認すると、コクリと頷いた。その瞬間会場が拍手に包まれ、伊藤くんはひざまずきながら男の子の手をガッシリと握りしめて感謝した。目には涙を浮かべていた。

「もう1枚ある?」

救世主である男の子に対し飯塚さんが

「色紙もう1枚ある?」

と聞くと彼は再度コクリと頷き、自身の小さなカバンから色紙を取り出した。僕らはその場で2枚の色紙にサインをし、伊藤くんと男の子にプレゼントした。

客席を見渡すと、じゃんけんで負けた人もみんな笑顔だった。最高の光景だった。


こうしてじゃんけん大会が一番平和な結果に終わった。


あのとき伊藤くんが出したのはチョキではなく、ピースだったのかもしれない。