和洋ツッコミバナシ
「ツッコミ侍森本をやります」
先月の半ば、事務所ライブ『バカ爆走』(毎月1日から6日まで開催)を担当しているマネージャーから「来月はツッコミ侍森本をやります」と伝えられた。ツッコミ侍なんてワード、初耳なのにありもののように言っていた。
詳しく聞いてみると、どうやら僕のツッコミをフィーチャーしてくれた企画らしく、要はモノボケにとにかくツッコミ続ければいいとのこと。なかなかハードな企画だなと思いつつ、せっかく考えてくださったので「わかりました。がんばります」と答えると、マネージャーが
「このツッコミ侍森本、三日間やろうと思っています」
ふざけるな。あんまないだろ、お笑いの企画でスリーデイズって。他の企画考えるの面倒くさがるな。
なんとか交渉し、ツッコミ侍森本はツーデイズにするという条件でお互い手を打った。
ストーリー性
そしてやってきたバカ爆走。ツッコミ侍にはどうやら台本があるらしく、見てみると
「時は戦国時代。群雄割拠の世の中に、1人の侍がいた。その男の名は森本。この男、どんなボケをしてきた相手にも、見事なツッコミを入れ、その相手を斬る。人呼んで、ツッコミ侍。今宵も森本はつっこむ。日の本一のツッコミになる日まで」
なんなんだこのストーリー性。ボケただけでツッコんで斬るって、そんなやつ国をあげて始末しろよ。
「ないよりはいいじゃないすか」
侍ということで相方の菅原が持ってる和服を借り、用意された侍のカツラをかぶる。そして大事な刀はマネージャーが持ってきてくれるということで待っていると
「刀持ってきました!」
思ってた刀じゃない。これはあきらかに中国の青竜刀だ。「ツッコミ侍が青竜刀持ってるってボケになってしまうのでは?」と聞くと
「でもまぁ、ないよりはいいじゃないすか」
急に投げやりになっていた。こいつ、発案者のくせに飽きたのか?
持ち込み企画
ツッコミ侍の格好で会場内外をうろうろしていると、後輩が話しかけてきた。
「これって森本さんの持ち込み企画って本当ですか?」
そんなわけないだろ。だとしたらこの先輩痛すぎる。しかも「本当ですか?」ってことはある程度噂として広まっているっぽい。もう手遅れな感じがぷんぷん漂っている。
「き、斬られた〜〜!」
いざ本番が始まり舞台に出ていくと、和服を着ているのは僕だけで、モノボケをしてくるやつは全員私服だった。僕だけめちゃくちゃ気合い入ってるように見えて『持ち込み企画感』が増している。肝心のツッコミはウケたり大爆死したりしながらもなんとか終了した。
終演後、マネージャーに挨拶しにいくと「いやぁ最高の斬りっぷりでしたねぇ〜〜」と、ニヤニヤしながらイジられたので「やかましいよ!」と言うと「き、斬られた〜〜!」とお腹を押さえながら消えていった。
そのあと後輩たちにも
「侍来た!」
「斬られる斬られる!」
「斬るものを探してるんですか?」
など、ツッコミ侍として扱われ続けた。ツッコミ侍をやった二日間は誰もまともに会話をしてくれなかった。
第二の森本選手権
ちなみにバカ爆走期間中に『第二の森本選手権』なる企画も行われた。これは僕に憧れている後輩たちがお題となるボケに僕がどうツッコむかをクイズ形式で当てるというもの。おそらくワンデイ削ったツッコミ侍の枠にぶち込まれた企画だ。
そんな企画ができるほど後輩にリスペクトされているのかと思い上機嫌になっていると、『バカ爆走』のLINEグループに企画概要が送られてきた。
「回答者は、全員森本さんの事を尊敬していて、森本さんになりたいテイでお願いします。(ちょっと小バカにする感じもアリです。)」
全然リスペクトされていなかった。むしろマネージャーから公式に小バカ命令が出ている。
本番ではただただ絶叫するやつがいたり、ツッコミを放棄してボケまくるやつがいたり、案の定森本からかけ離れたやつしかいなかった。そしてそんな低レベルの戦いの中優勝したのが菅原だった。同じトリオに第一、第二の森本がいる形になった。
27カラット
バカ爆走期間が終わり、今月10日に行われた27歳の芸人たちによるユニットライブ『27カラット』での出来事。本番数週間前に企画会議で全員が集まることになったのだが、僕たちはライブがあったので遅れての参加になった。すると会議がスムーズに進んだようで、僕たちが着く頃にはすでに企画がいくつか決定しており、ランパンプス小林さんが概要を説明してくれた。
「合同コントなんだけど、結婚式っていう設定で僕とヒコロヒーが新郎新婦。で、森本くんが牧師さん。で、誓いのキスをしようとすると『ちょっと待ったー!』と言って27カラットメンバーの1人が花嫁を奪おうと入ってくる。そこでモノボケをして、森本くんがツッコむ」
おや…?
「で、そっから27カラットメンバーが次々と花嫁を奪いにモノボケしてくるから、森本くんが全部ツッコんでいくってやつなんだけど」
ツッコミ侍の洋風バージョンじゃねーか。侍から牧師になっただけだ。聞くところによるとツッコミ侍に関してはまったく知らず、どうやら偶然企画がかぶったらしい。どんなミラクルだよ。
そんなわけでツッコミ侍の数日後に僕はツッコミ牧師として舞台に立った。バカ爆走を見ていたお客さんがいたら「あいつツッコミ侍に味しめてまたやったのか?」と思われてないかだけが心配だ。もしそんな人がいたら青竜刀で斬りに行かなければ。
おまけ
「邪魔!」と後輩に怒られるツッコミ侍